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−シニア海外ボランティアとして2年間ブラジルで活躍された磯田昇氏に執筆をお願い致しました−

「アマゾンでの生活から思うこと」   2003-9 JICA・元シニア海外ボランティア  磯田 昇
−大きさや広さには感動の連続だった−
 忘れもしない平成13年7月19日午後1時半ごろ、成田から三十数時間のフライトの後、入り込んだアマゾンを初めて機中から見た。感動のあまりスチュワーデスにどれがアマゾン川と問い合わせたが答えはなかった。
本流がどれか誰も判らないし、知ったからとてさほど意味のないことが理解できるのに3ヶ月ほどかかった。
 私達夫婦が未地のアマゾンで2年間に亘り生活するチャンスに接することが出来たのは、JICA(現・国際協力機構)のシニア海外ボランティアとして派遣されたからに他ならない。実はスペイン語圏を希望したのだが、何故か「ブラジル」のそれも熱い「ベレン」でポルトガル語であった。不安と戸惑いからの出発でもあった。
ブラジルは大きくて広い、私達の住んだパラ州だけでも日本の3倍にあたる面積に約5百万人が住んでいる熱帯地域そのもので、豊富で美味な果物・味わった事もない食材・地平線に一直線に伸びる道路などなど、今なお感動を覚える所でもあった。

    
                                ベレン遠景
−熱さとの闘いに負けなかった−
 熱帯でもあるアマゾンでの生活は、先ず熱さに慣れることからだった。日中の日差しは強烈でも日陰は過ごしやすく、夜になると肌寒いくらいの温度差があることが判った。更に初年度には電力不足による節電が徹底され、違反者は送電中止との通達がきた。事情が判らないまま安易にエアコンに頼らない過ごし方を求め、休日にはプールサイドで身体を焼いたり、夫婦で外出しては汗をいっぱいかき直ぐシャワーで洗い流したり、車では窓を開け風を入れては涼を求めて走る習慣に慣らせようとした。そして帰国した今、自然に慣れた身体はエアコンに長時間あたると風邪を引くような錯覚に陥ることがある、慣れとは恐ろしいものだ。
−違いの大きい日本とブラジル−
 日系人が多いと言っても外国である以上違いは色々ある。一番の戸惑いは「確認」することだったかも知れない。スーパ−で買い物をする時は賞味期限が切れていないか、レシートと商品が間違っていないか、空港のカウンターで航空券と搭乗券を見ながら行き先が間違っていないか、帰り便の航空券が必ず付いているか、銀行の引き落としは他人のものが処理されていないか、玄関の鍵はいつもダブルでかけてあるかなどなどである。およそ日本では考えられない話だが、この確認を怠ると全て責任はこちらについてくる。それだけで済めばよい、時には命を落としかねない場合だってあるのだから・・・
−見習いたい陽気な生き方−
 そんな生活のリズムを理解さえすれば、又楽しい時間を持てること請け合いだ。彼らは少なくとも日本人に比べて人生を楽しむことに懸けては天才だ、我々も少しは見習うべきかもしれない。2月〜3月にかけてRioで有名なカーニバルが全国的に行われるが、1年働いた貯金をこの一週間に全て使ってしまうことは珍しくない。それでも決して落ち込むことはないのである。
 そして・・・・・
 帰国して最初に気が付いたのは「日本人に笑顔がない」ことだ。
毎日リッチでクリーンでハイレベルな生活を楽しんでいる日本(人)が、今不況のどん底で将来の見通しが立たないと憂いても外国人は誰も信じないだろう。それほど今の日本は素晴らしい国になったのだ、このような生活を享受できる国は世界でも稀だと誇れよう。もっと自信を持って「笑顔」で毎日を過ごしたいものだと思う。 
中進国ブラジルが教えてくれた先進国日本への生き方の警鐘ではないだろうか。

     

−なお、JICA関係では目下神谷清氏がイランの省エネルギーを促進するために「タブリーズ」で技術指導に当たっています−

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